尼崎の列車事故から一年が経った。
ほのママは今日も事故現場を通るJRに乗って大阪までやってきた。乗客の様子はいつも通りのように見えたけど、よく耳をそばだてると去年の事故の話題があちこちで聞かれた。現場を通る時には、目の前に座っていた喪服の女性が外に向かって手を合わせていた。
ママは毎日この列車に乗って事故現場を通るので、去年の事故を思い出さない日はない。
一年前の今日、ママは風邪気味のほのちんの様子をうかがいながら、いつもより遅めに家を出た。家を出る時にバアバが「お弁当のお箸を忘れてるよ!」と呼び止めてくれたのだが、急いでたので「割り箸で食べるからいい」と振り切って出た。そして8時半過ぎにほのちんを保育園に預けて駅まで走った。幸いすぐに快速が来たので、それに飛び乗って大阪まで行ったのだ。
事故に遭ったのはママが乗った次の快速電車だった。
「もしお箸を取りに戻っていたら」「もし駅まで走っていなかったら」と想像しただけでぞっとする。
しかもママは先頭車両の前方に立って前の景色を見るのが好きなので、その日も大阪までは先頭車両にいた。
だからとてもこの事故が他人事とは思えない。
ご冥福をお祈り致します。